ニューモネット・ジャパンとは

ニューモネット・ジャパンとは?

肺炎球菌の引き起こす病気には、細菌性髄膜炎・菌血症・肺炎・中耳炎があります。
細菌性髄膜炎は治療にも関わらず、場合によっては後遺症を残すことや、死に至ることもある恐ろしい病気です。菌血症とは通常であれば細菌のいない血液の中に細菌が侵入している状態のことで、治療が遅れると重症化します。肺炎や中耳炎といった比較的ありふれた病気でも、重症の患者さんや繰り返す患者さんには肺炎球菌を原因とするものが多いと言われています。
細菌性髄膜炎や菌血症は病気としては稀ですが小児期に最も多く、肺炎や中耳炎は小児期にとても多い病気であることはご存知のとおりです。
しかし、いずれの病気も子供たちの間で正確にはどのくらいの頻度で起きているのか、これらの病気の中で肺炎球菌がどういう割合で原因となっているのか、どの型の肺炎球菌が原因になっているか、何が背景にあってこれらの病気になるのか(リスクファクター)などについての調査が、我が国では十分に行われていませんでした。そのため、日本には髄膜炎や菌血症が少ないという推測や、それらの病気をの特別な予防やワクチンは必要ないという意見がありました。
そのような状況の中、日本を対象に、肺炎球菌に関連する主要な病気である肺炎・細菌性髄膜炎・菌血症について行うことにした調査・研究が「ニューモネット・ジャパン(肺炎球菌疫学プロジェクト)」です。ニューモネット・ジャパンは2008年初頭より北海道・沖縄で開始しており、それぞれニューモネット北海道研究会・ニューモネット沖縄研究会として積極的な研究活動を行っています。また、同様の調査が肺炎球菌ワクチンの普及していないアジアと東欧の各国でも実施されています。

ニューモネット・ジャパンの新しい点

今までにも日本では細菌性髄膜炎・菌血症・肺炎に関する研究、肺炎球菌に関するすぐれた研究がありました。しかし、ニューモネット・ジャパンの画期的な点は「全数把握(population-based study)」という調査方法を取っている点です。
例えば、ある県あるいはある病院で毎月何人の患者さんを診ているかという統計を取るとします。しかし、患者さんは必ずしも自宅近所の病院に行くわけではありません。そのため、この方法では患者さんの数の増減(流行っているかどうか)は分かっても「人口当たりの発症率(incidence)」を知ることはできません。対象としている集団の大きさが分からないからです。ところが、ニューモネット・ジャパンでは、沖縄、北海道の道東地区といった「患者さんが調査地域の外に逃げない場所」を調査地として選んでいるため、これを知ることが出来ます。
北海道の道東地区は十勝大雪山系という高い山脈によって北海道の西側との交通を分断されているので、肺炎や髄膜炎といった急を要する病気の患者さんが山脈から西の地域に行くことはありえません。同様に、沖縄県は日本列島の南端の島嶼部ですので、急を要する病気の患者さんが海を渡ってわざわざ鹿児島の病院にかかることはないでしょう。よって、対象地域の病院が全部参加して「全数把握」を行えば「人口当たりの発症率」を知ることができるというわけです。
「人口当たりの発症率」が分かって初めて、日本ではこれらの病気が本当に海外に比べて少ないのかなどを議論することが出来ます。
臨床で多忙な、対象となる病院のすべてから調査への参加合意を得ることは非常に大変です。また、日本のように人口密度の高い国では「患者さんが調査地域の外に逃げない場所」というのは自ずと限定されてきます。しかし、それらをすべて乗り越えニューモネット・ジャパンは実現しました。

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